<アフリカ学会> は毎回欠かさず参加しているが、<言語学会> というのは、気になる発表があるとか、シンポジウムに興味があるとか、近いので行きやすいとか、そういう機会にしか参加していない。
最近行ったところでは、2008年秋の金沢大学での大会。
この時は、我らがY田N子とS川くんがバントゥ諸語の適用形について共同発表をしたし、スワヒリ語やシダマ語の発表、マア語の展示など、アフリカ言語関係が多かった上に、大学院時代の同級生の 『フィリピン言語学の現在』 という講演もあったので、わざわざサンダーバードに乗って出かけた。
その次は、2009年秋の神戸大学の大会。 この時は、公開シンポジウムのタイトルが 『言語学概論を見直す』 という、大変興味をそそられるものだったので、それだけを聞きにいった。
で、今回、2011年秋の大会(11月26, 27日)は、我が勤務校でおこなわれ、私も発表の司会役などをおおせつかったので、久しぶりに参加することになった。
で、ついでに、ななみちゃんも <学会デビュー> したのでした。
<学会デビュー> といっても、「初めて学会に子どもを連れて行く」 というだけのことですが、最近は (というか、だいぶ以前から?)、乳児幼児をもつ親のために、学会会場に託児室が用意されるようになってきている。
今回も、「せっかく用意していただいたので利用しましょう」 ということで、2日目の公開シンポジウムの時に連れていき、あずかってもらうことにした。
受付の大学院生のおねえさま方と記念撮影。

(ちなみに、ななみがかぶっている帽子は、けいごパパからもらった 「ネパール帽」。 自分で選んで、かぶって来たのでした)
こののち、偉大な言語研究者のみなさま方とも記念撮影をした。七海の頭に手をおいてもらってのショットは、《ななみがカ行とラ行をちゃんと発音できますように》 という願掛けも入っている。
託児室は共通教育棟A203の教室。
「ママはね、この上のAの303のきょうしつで、いつもスワヒリ語のじゅぎょうをやっているのよ」 という解説も聞かずに、ななみは託児室に突進していき、保育士の方に猛アピール。

他の子どもたちや保育士の方と3時間、たっぷり楽しく遊んでもらい、七海にとってもよい学会となりました。
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で、ななみちゃんが楽しく託児されている間の公開シンポジウムは、かつて 『イ号館』 と呼ばれ、今は改装されてきれいになった 『大学会館』 でおこなわれた。
2階席から拝聴@大学会館内部の講堂

シンポジウムのテーマは 『活用論の前線』 というもので、特に、ヨーロッパ系の言語の活用と日本語などの活用を統一的にとらえようとする 「拡大活用論」 の話は興味深かった。
言語学の授業なんかで、ヨーロッパ系の言語の動詞活用を 「屈折的」、日本語などの動詞の活用は 「膠着的」 と教えたりするけど、これって、そんなに大きな違いなんだろうか、とつねづね思っていた。
たとえばイタリア語の動詞 「話す」 の活用形を見ると、
parlo
parli
parla
parliamo
parlate
parlano
となるけど、これを 「屈折」 と言わずに、「語幹 parl に接辞 -o, -i, -a, -amo, -ate, -ano が <「膠着> している」 と、言おうと思えば言えるのではないか、と。
もちろん、一つの要素が、たとえば 「1人称単数・現在」 などのように2つ以上の機能を担っていたり、語幹と接辞が分けられないような不規則変化の動詞があったりするから、語幹に接辞が膠着していると言い切れないんだろうけど、それでも、「その線引きってどうなのかなぁ~」 と思っていた。
「拡大活用論」 というのは、膠着や屈折のように異なって見える 「活用」 を、統一的な枠組みの中でとらえようとするもので、なるほど、そういう枠組みを設定すると、さまざまな動詞の「活用」を一つの広い視点から理解しやすくなって、いいんじゃないのぉ、と納得。
そうすると、1日目に司会をした発表の 「古典ナワトル語の人称標示」 についても、動詞の 「活用形」 と捉えると分かりやすいのではないかと思った。あの人称標示は、確かに発表者の主張のように、代名詞的要素ではないけど、じゃ、「一致要素」 かというと、「何に <一致> してるわけ?」 ってツッコまれてしまうわけで、「一致」 ではなく、「活用形」 の一形態なのだと考えれば、腑にも落ちやすいだろうし、理解もしやすいのではないか、と思った次第です。
・・・ などと、つらつらと 「活用」 について考えさせられる、よいシンポジウムでありましたが、私がこのシンポジウムの中で受けた最大の衝撃は、「連用命令形は関西方言である」 という事実でした。がーん。
「ほら、これ、食べ。」 とか、「大きな声で、読み。」 とか、「子どもだけで、行き。」 など、連用形で命令を表す形式。 これって、関西方言だったの!?
「食べなさい」 とか、「読みなさい」 とか、「行きなさい」 の 「なさい」 が省略された形だと思っていたんだけど、標準語ではこんな風に言わないのね ・・・。
まぁ、たしかに、考えてみれば、「これ、食べぇ~」 とか、「大きい声で、読みやぁ~」 とか、「子どもだけで、行きぃ~」 などのように、妙に関西アクセントになじむ表現ではあるなぁ、と思っていましたが ・・・。
「連用形がデフォルト的にいろんな環境に現れる」 という発表内容の中で、発表者がその例として、「泣き(そうだ)」 とか、「やり(ます)」 とか、「読み(ながら)」 とか、「壊し(て)」 など、連用形のいろいろな形をあげていたが、それを聞きながら、「なんで、連用形で命令を表す形式を例にあげないんだろう」 と思っていた。
そう思っていると、発表ののちにフロアから、まさにその点についてのコメントがあった。 すると、発表者は、その用法については知っているが、「なにぶん、私にはその用法についての直感がないので ・・・」 とおっしゃった。
「直感がない」!? 私はその言葉ですべてを理解した。
そう、「non-native 関西人」 であるところ発表者にとって、それは、まるで 「外国語」 のようなひびきに違いないのだ。「もう、起き。」 とか、「はよ、食べ。」 とか、「ほんで、さっさと学校、行き。」 なんて言われると、「はぁ~?」って感じか、異人を見るような眼を向けるか ・・・ であろう。
私はこの事実に衝撃を受けながら、またしても、私を取り囲んでいた 「日本語」 の世界がはらはらと音を立てて崩れていき、「関西方言」 の世界が ・・・、いや、「大阪弁」、・・・ いや、「河内弁」 か? ・・・ の世界が、むき出しに迫ってきたのをひしひしと感じたのでありました。 どんだけぇ~。
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まぁ、めったに参加しない言語学会ではありますが、参加していろいろな発表や講演を聞けば、それなりに興味深く、私自身のお勉強のモチベーションも、少しは上がろうってものです。
そして、今回初めて 「司会」 というのを経験させてもらったのですが、意外にも 「学会の司会は楽しい」 ということに気付いたのでありました。
「他に人がいなくて & 開催校の人がやった方がいいんじゃないの & 後輩の Junko さんなら頼みやすくて」 という感じで、先輩のSさんから依頼されたのですが、「何なの、その言語!?」 という、ほぼ初耳の 「古典ナワトル語」 と、多少は縁があるからって言われてもねぇ~、の 「アラビア語チュニス方言」 についての、2つの発表の司会をおおせつかった。
司会、といっても、たいていは発表前に、「では、ご発表をどうぞ」 と言い、発表が終わったら、「はい、では、何か質問、コメントなど、どうぞ」 とフロアに振る、というだけの仕事で、はた目には全く 「大したことのない」 仕事に見えるし、そう思っていた。
ところが、実際にやってみて思ったのは、まず、その発表内容に対するこちらの興味と理解が、単にフロアから発表を聞いている時とは、全然ちがう。
事前に送られてくるレジュメをじっくり読み込んでから発表を聞くので、「ふむふむ、アステカ帝国の言葉がナワトル語か ・・・」 とか、お勉強の成果とともに、面白く発表を聞くことができるわけです。
発表のあとは、フロアからの挙手に 「はい、どうぞ」 と振るだけですが、質問やコメントが出てこない時は ・・・。
そういう時は、「司会者が何か言ってあげてね」 と言われていて、「そうなったら、どうしよう」 なんて思っていましたが、実際にそうなってみると、これがまた、よかったんですよね。
どんな発表でも、聞いているうちに、「ん? これはどういうこと?」 とか、「うーん、こういう場合はどうなの?」 とか、つれづれにいろいろなことが頭に浮かんでくるものです。
でも、フロアにいると、わざわざ挙手してまで聞くことじゃないなぁと遠慮して、発言などめったにしないわけです。
それが司会をやっていると、「あ、間があいたな」 と思えば、誰にあてられなくても、自分からマイクをとって、「ちょっと、聞きたいんですけど。・・・」 と、とてもフランクに聞くことができる。
で、発表者は、<真摯な態度> 状態でスタンバイしているので、「え、なんで、そんなつまらない質問するんですか!?」 なんてことは絶対に言わなくて、とても一生懸命に答えてくれる。
「チュニス方言とエジプト方言って、かなり違うもんなんですかねぇ~」 なんていう、「それ、発表内容とあんまり関係ないじゃん」 ってツッコまれそうなコメントも、気軽に述べることができて、大変楽しかったわけです。
ま、結局、「出たがり」 の性分と申しましょうか、「仕切りたがり」 の血が騒ぐと申しましょうか、司会のような役目は、大変に私の性分に合っていた、ということが判明したのでありました。
というわけで、今後は、「関係学会の司会はどうぞ私にお任せください!」 と大いに宣伝したいところですが、Y田N子曰く、の、「学会で、こてこての大阪弁の司会ってのも、どーよ」 って感じなので、まっ、関西地区で開催される学会限定ってことで、よろしくぅ~ o(*^▽^*)o
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