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2008年9月 6日 (土)

サリバン先生を探せ

七海はお土産にもらった帽子とカゴがお気に入りで、・・・というか、出かける時の必需品と思いこんでいるらしく、「さぁ、行くよ」という段になると、あわてて帽子をかぶり、カゴを手に玄関までやってくる。靴をはかせてもらって、「よっこらしょ」と立ち上がると、カゴごとペンギン歩きで玄関を出ていく。

20080903a_2車が来ると危ないので、手をつなごうとすると、猛烈に拒否!である。

「お母さん、放っておいてください。七海は一人で歩いていきますから。」

未だ「パパ」と「ママ」しか言えないのにも関わらず、態度でキッパリそう示し、毅然と一人で歩いて行く。

20080903b「あー、ななみちゃーん、どこいくのー?」

「ななみしゃーん!」

「おーい、ななみしーん!」(最近は「ななみしん」と呼ぶのがマイブーム)

車で行くのが分かっていて、しかも、車とは違う方向に歩いているのも分かっていて、の狼藉である。

こういう時は、追いかけると余計に逃げて行くから、隠れるに限る。

20080903c_2「ななみしんっ、もう、行くからね!」と言って、車の陰にしばらく隠れていると、探しにやってくるのである。

そのへんがまだ3歳児。しかし、これは、車が来ないかどうかヒヤヒヤしながらの荒業ではある。

・・・なんてことを、しかし、いつまでも続けていてはいけないのだ。

七海が歩き始めてから5か月。まだ話せないとは言え、この間の成長はめざましい。歩くまでは「赤ちゃん呼ばわり」していたが、さすがにもう「赤ちゃん」ではなくなり、「幼児呼ばわり」がふさわしい。

「赤ちゃん」は、ただミルクを飲んで大きくなり、這えば立て、立てば歩めで、何ごとも阻まれることなく、思うがままに成長さえしていれば、それでよかった。

しかし、幼児は、そうはいかないのだ。

思い通りに歩き回ってもらっては困る。食べたい物だけ食べ、食べたくない物は、ぐちゃぐちゃにしてテーブルにポイ、では困る。いつまでも歯磨きをいやがり、洗髪をいやがっていては困る。

先月末の母子センターでの検診のときも。
いくら待ち時間が長いとはいえ、ひと時たりとも、じっとしていることがなく、院内を歩き回る。連れ戻すと絶叫、ベビーカーに乗せると地面を指して叫喚である。根負けした私が七海を放つと、さっさとどこかへ消えていく。

「ま、ここなら、誘拐されることもないでしょう」
やれやれと待合席に腰をかけていると、どこからか七海の手をひいて看護師が人探し顔にやってくる。

「あらー、七海ちゃん、どこに行ってたのぉ? ママ探したわよぉ」という態度で駆け寄り、看護師にお礼とお詫びを言って引き取る。

「野性児」― 初めてそんな言葉が頭に浮かんだ。

「野性児」といって思い浮かぶのは、ヘレンケラー物語。熱病で視力と聴力を失い、しつけもされずに、やりたい放題、わがまま放題に育っていた幼いヘレンケラーに、万物に名前があることを教え、「人間」の世界へと導いていったサリバン先生。

そう、七海には「サリバン先生」が必要なんだわ! と母子センターの待合席で悟ったのでありました。

その悟りを裏付けるかのように、受診した発達小児科のドクターが言った。

「七海ちゃんは体重の伸びもいいし、しっかり歩けるようになったし、これで言葉が出れば、普通の3歳児と変わりませんね。言葉が出るように、なにか後押ししてあげることができればいいんですが・・・。」

え、普通の3歳児? 前回受診した小児神経科のドクターには、「今の発達段階はせいぜい1歳半くらい」と言われていたから、「まさか3歳児ってことはないでしょう」と思いつつも、悟りの境地に入りつつあった私は、「後押し、つまりサリバン先生ね!」と至極、納得したのでありました。

サリバン先生を探せ。

少しの悪戦苦闘の結果、これまでのところの戦績は1勝1敗。

なんと言ってもまず、ストレート勝負は言語訓練でしょう。障害を持った子の言語訓練を個人でやっている「ことばの教室」というのを探し出して、まずは面談に行く。

長年のプロといった感じの初老の男性が先生。桂吾ママから聞いていたように、カードを使って認識の訓練から始めるようだ。「まずは、こちらにご記入ください」と、何枚もの詳細な情報を書く個人カードのようなものを渡される。まだ入所するとは決まってないのになぁ、と思いつつも、記入し始める。結構書くことが多くて、時間がかかる。

その間、先生は七海にカードを見せたり、形合わせのブロックをやらせたりしている。七海は少し、はにかみながらも、その要請にこたえたり、こたえなかったり。

先生が、「ななみちゃん、この中で車はどれかなぁ?」と、小さな絵がいくつか書いてある紙を見せて尋ねる。すると七海は、しばらくその紙を眺めていて、おもむろに車の絵を指さす。 えっ?すごい! 私は書きながら横目で見て驚く。

「じゃぁ、ななみちゃん、お魚はどれかな?」 魚の絵を指さす七海。 わぁぉっ、いつの間にそんなことが分かるようになっていたの!

「じゃ、お人形はどれかな?」 「・・・」 七海は指さすことなく、ぷいっとあちらへ行く。うーん、ここが限界かぁ。

他のカードなどを見せてもらい、どのように訓練していくか、今までの子供がどのように成長したか、などの話を聞く。これはすばらしい。週1回の通所でも、かなりの成長が望めそうだ。さっそく来週からでも通いましょうと思い、「こちらの希望としては金曜日の午後が・・・」と言いかけると、それを遮るように先生、「すみません、今は水曜日の1時から3時の間しか、やってないんですよ」

「えっ?他の曜日はやってらっしゃらないのですか?」

「ええ、生徒さんもそんなに多くないですし、週に1回しかやってないんです」

「でも、水曜日は、思いっきり仕事があって、来れないし・・・」

「・・・・。」

「私が夏休みの間だけ通うっていうのは、どうでしょうか」

「1か月ではねぇ~。最低3か月見ないと効果はないでしょう」

「・・・・。そうですか。じゃぁ、残念ですが、またの機会にということで」

ほんとうに残念に思いながら、帰り支度を始めた。七海の出したおもちゃなどをかたずけていると、

「じゃ、今日は、相談料ということで、3千円いただきます」

「はぁ~!?」

思わず声を上げそうになったが、さすがに私の「日本人気質」がそれを押さえ、冷静をよそわせた。まぁ、確かに、私たちの面談のためだけに、先生は教室をあけに来たようではある。確かに、発達テストのようなこともした。「寝る前に同じお話を毎日してあげるといい」というようなアドバイスらしきものももらった。それが「相談」ってことだったわけ?

「でも、3千円って、きいてないよ、それ」「っていうか、入所の申込みにきたつもりなんですけど」「っていうか、そもそも、電話で問い合わせた時に、なぜ、水曜日しかやってない、と言わない!?」

・・って、全部言えばよかったと、今になってみれば思うが、あの時は、「先生この子をどうかよろしくお願いします」モードの母親役だったものだから、とっさに、「なんやねん、それ」モードには切り替わらない。

うまい具合に、おつりもなく千円札3枚が財布に入っていたものだから、それを取り出して渡し、さっさと教室をあとにした。

気分的には、惨敗である。

*******┐( ̄ヘ ̄)┌ *******

一方、時を前後して、摂食障害の子供もみているという歯医者さんのもとに通うことになった。そこでは、「正しい食べ方・食べさせ方」&「正しい歯磨きのさせ方」を指導してもらう。

最近は、七海はまったく歯磨きができない。というか、させてもらえない。歯ブラシを口に近付けるだけで絶叫である。

困り果てて、保育園であった歯磨き講習会に参加し、歯科衛生士さんに相談すると、「お母さん、どんな磨き方してますか?」と聞かれた。

これまでの様子を話すと、「そりゃぁ、お母さん、子供にとっては「拷問」ですよ。そんな風にされたら、大人だっていやじゃないですか?」

はい、そのとおりでございます。私が悪うございました。

しかし、歯科衛生士さんは、七海をみて、それだけが問題でないことを見抜き、「摂食や言葉のことも全部関係してますからね」といって、摂食の指導をしてくれる歯医者さんを紹介してくれたのである。

富田林からさらに「田舎」方面にある河南町の村田歯科というところ。途中までの道のりが、太郎ちゃんが眠るワールド牧場ペット霊園へ行く道と同じなので、なんとなくいい感じである。

20080903d村田先生は七海が食べるところをビデオにとり、食べさせ方の悪いところを指摘し、正しい食べさせ方を教えてくれる。

でも、こんな風に食べさせないといけないなんて、普通の親は知らないだろうし、正しい食べさせ方をしているとは限らないだろうになぁ、というようなことを言うと、「普通の子は、親がへたな食べさせ方をしても、それを乗り越えてちゃんと自分で食べれるようになるんです。でも、ななみちゃんの場合は、食べる能力を上手に引き出してあげないとだめなんです。今の食べさせ方では、食べる能力を押さえてしまっているようなものです」

はー、そういうもんですか・・・。
要はこちらの意識の持ち方を変えないといけないのだ。とにかく「栄養を摂取させる」ことばかりを急ぎがちで、「えさをやる」感覚だったものを、「七海が自分で食べることを手伝う」感覚に変えなければいけない、そんなことが分かりかけてきた。

20080903eそして、村田先生がやると、あら不思議。あれほどいやがっていた歯ブラシを、まがりなりにも口につけることを受け入れるではないか。

歯ブラシを見せて、「はい、じゃぁ、左下の奥歯を磨きますよ。10数える間だけがまんしてくださいね」と声をかけるのだ。そして、右下、右上、左上、前下、前上と、同じことを繰り返す。

はい、じゃ、お母さん、やってみてください、と言ってやらされる。

はい、ななみちゃん、いきますよぉ。この歯ブラシで、まず左下の奥歯を磨きますよぉ。5だけにします。5だけ数える間、がまんしてくださぁい。1、2、3 ・・・ わーぉ、ななみちゃん、逃げないでぇ!

逃げ出す七海を見ている私に、先生はするどく言った。

「お母さん、やめちゃだめですよ、最後までやらないと。最後までやって、本人が我慢してやり遂げたという達成感を覚えないと。それが教育というものですよ。」

ははー。 私はひれ伏して、教えを心に留めおいたのでありました。

見かけはずいぶんイメージと異なるが、一人目の「サリバン先生」である。

ある意味、私にとっても「サリバン先生」である。

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コメント

すでにご存知かもしれませんが,こういう検索サイトもあります.
http://www2.wam.go.jp/wamappl/db21Jido.nsf/aOpenSearch?OpenAgent&FORMONLY 
サリバン先生,見つかるといいですね.
psでも,写真の七海ちゃん,すっかりお姉さん顔になりましたね!

 ありがとうございます。
 私もいろいろとあたってみているのですが、関係の施設やら機関やら、たくさんあるわりには、なかなかこちらの条件にあうところがないんですよねぇ。公的な機関は一見いろいろとあるように見えるのですが、実際には、地理的、条件的に非常に「手薄」な感じです。
 結局、私の「サリバン先生探し」は、子供が生まれる前には「なんでこんなところに子供をやるんだろう」といぶかしく思っていた「七田チャイルドアカデミー」の門をたたくところまでに至っております(^_^;) うちのすぐ近所にあるもので。顛末はまたブログでご報告しますね(^O^)/

私も読んでいてとても勉強になりました。
ちょっと特殊な子への指導は、やっぱり素人の思いつきでは難しいのですね…
よい摂食の先生がみつかったとのこと、本当によかったですね!

うちも今、通わせたい発達の遅れの教室があるのですが、なにしろ時間がなくて…
親も試行錯誤の連続ですね。

ほんとに、「試行錯誤」とは、このことですね。
子どもができる前は、「子どもなんて、親の背中を見て育つもの」、「お受験とか、幼児の英語教室とか、信じられなーい」なんて思っていたのに、「思うのと育てるのとは大違い」。親の背中を見るだけでは上手に「育たない」子もいるのだ、ということを初めて知りました。そういう子をもつ親は、ちょっとした「コツ」を教わらないと、やっぱり、難しいんだなぁ、と痛感の日々です。

でも、そう考えてみると、「普通の子」でも、それぞれの親にとっては、何かしら心配や、「コツ」がわからずに悩むことがあるわけだから、さまざまな幼児教育の教室が求められるのも無理ないんだなぁ、と思いました。

それにしても、そういう教室は、「働く親の都合」は、まったく無視ですね。リカちゃんに通わせてあげたい教室だって、きよぽんさんの休みの日とか、仕事が終わってからとか、そういう都合に合えばいいのに、そういう風にはできないんでしょうね。あの「言葉の教室」だって、とてもいい感じだったのに、「水曜日の午後1時~3時」だなんて、「母親は専業主婦!」の前提にたってますもんね。なかなか難しいものですthink


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