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2017年11月30日 (木)

映画『トゥンブクトゥ』とアメリカナイズド・ジャパニーズ

今年からバンバラ語の授業をやっている。

「西アフリカ諸語演習」という授業科目で、これまでヨルバ語をやってきた。しかし10年間、同じテキストで、「こんにちわ - こんにちわ」、「お元気ですか - はい、元気です」、「お父さんは元気ですか - はい、元気です」という会話を繰り返し続け、ついに飽きた。

それで、今年は意を決して、ナイジェリアのヨルバ語を離れ、西進して、マリのバンバラ語をやることにした。

4年ほど前から独習し始め、自分自身もまだ、初習者の域を出ていないが、ちょうど音声つき会話テキストが手に入ったので、それで一緒に勉強する、というスタイルの授業を始めた。

「一緒に勉強する」というスタイルなので、大変フリー、というか、フランク。それで、受講生の提案で、『トゥンブクトゥ』という映画を、授業で観ることになった。

原題 『Timbuktu』 邦題『禁じられた歌声』
(2014年 フランス・モーリタニア映画)

Poster2

マリの古都トゥンブクトゥが舞台で、イスラム過激派が町を占拠し、歌も禁止、サッカーも禁止と、人々を抑圧的に支配していく話。公開処刑の実話に触発されて作られた映画だそうで、フランスの名だたる映画賞をとっている名作。

主人公たちは「トゥアレグ」という名で知られる砂漠の民で、タマシェク語(アフロアジア語族、ベルベル語群)を話している。過激派はアラビア語やフランス語、時に片言の英語を話している。

トゥンブクトゥの町で商いをする女性はバンバラ語を話し、また、夜に聞こえる歌声もバンバラ語である。

というこの事実のみで、バンバラ語の授業で鑑賞するにふさわしい映画といえましょう。ただ、聞きとれたバンバラ語が 「ne fa so」(我が祖国)と、「jege」(魚)だけというところが、何とも悲しいところではありますが・・・。

名前はよく知っているけど未だ見ぬ町トゥンブクトゥ。その町なみや人々の様子を垣間見ることができ、また、川や砂漠の風景を撮った映像が美しい。青年たちがボールのない「エアーサッカー」に興じる姿は、まさに「叙事詩的」であり、胸を突かれる。

モーリタニア出身でマリにも住んでいたことがある仏在住の監督が撮った映画であり、取り上げられているテーマといい、映像の美しさといい、確かに称賛に値する映画である。

が、しかし。

観終わったあとに、「え、もう、おわり?」、「え、どういうこと?」、「え、あれは誰?」、「え、なんで死んだん?」の、「?」の嵐。

最後のところを巻き戻して見直しても、「だから、あれは、誰やったん?」、「え、何しようとしたん?」という疑問は解消されない。エンドロールが流れたので、止めて終わろうとしたら、「あっ、もしかしたら、エンドロールのあとに、まだちょっと続くんじゃないですか? よくあるドラマみたいに」と言うので、期待して最後まで見たが、それは虚しい作業に終わりました。

つまり、全体的には、「イスラム過激派による理不尽な支配」、「抑圧される人々」というテーマと、美しい映像がちりばめられていて、雰囲気的にはよい映画なんですが、細かい話の筋が見えない。というか、分かりづらい。

映画をみながら話の筋を追い、起承転結を見出そうとし、最後にクライマックスと感動、あるいは衝撃、あるいはカタルシスを求めてしまうのは、そういう映画にどっぷりとつかってきた「さが」でしょうか。

いわゆる、ハリウッド映画的な?

いや、起承転結のない、淡々とした映画でも、どこかに強く感動する場面があれば、カタルシスが得られて納得して見終わるので、少しでも「気持ちを揺さぶってくれ!」みたいな?

お話の筋がはっきりしていて、最後に感動が待っている。そういった映画を無意識に求めているような気がします。そのような映画を「ハリウッド映画」的と呼びましょう。そう、私たちは、アメリカナイズド・ジャパニーズ。

『禁じられた歌声』は日本でも劇場公開されたようで、その予告編を見ることができます。

『禁じられた歌声』予告編

これは、典型的なアメリカナイズド・ジャパニーズが作った、アメリカナイズド・ジャパニーズのための予告編ですね。

この予告編を見ると、映像の美しさが垣間見られます。そして、話の筋が想像されます。曰く;

イスラム過激派に支配されるトゥンブクトゥ。その町にいる少女が主人公らしい。その少女が過激派支配のために、つらい目にあうにちがいない。だって、<愛を知る前に、自由を奪われた> という文字が画面に見えるから。

もしかしたら、彼女のお父さんが過激派に殺されてしまうのかもしれない。お父さんらしき人が「娘の顔が見たい」と言い、少女が「父さんはいつ帰る?」と聞いている場面があるから。

あー、この少女はどうなってしまうんだろう? お父さんは過激派に殺されてしまうんだろうか? あー、なんて、悲しそうな、つらそうな映画なんだろう。

<実話をベースに人間の「赦し」とは何かを描いた、> という文字が見える。あー、つまり、お父さんは赦されるんだろうか。あるいは、過激派が赦されるんだろうか・・・。

というふうに、この予告編からは、お話の筋がおぼろげに見え、映画をみたらきっと、最後のクライマックスや感動を知ることができるだろう、と期待される。

あー、ぜんぜん、ちがいますから!

そんな話の筋じゃないですから!

お父さんは、近所の人との牛をめぐるトラブルに巻き込まれたって話ですから!

<愛を知る前に、自由を奪われた> っていうのは、話の筋にはほとんど関係なく、ましてこの少女とは、ぜんぜん関係ないんだから!

どこに <赦し> の部分があるのか、ぜんぜん見えませんから!

ということで、アメリカナイズド・ジャパニーズによる、アメリカナイズド・ジャパニーズのための、話の筋を作り上げたような予告編が見事に出来上がっている様子を、ここにつぶさに観察することができます。

そして、私自身もまた、この予告編のような筋を期待し、感動を待っていた、ということが、あらためて自覚できたのでありました。

まぁ、ハリウッド映画的な起承転結や感動は期待できないかもしれませんが、それでも、そういうことを含めて、いろいろと考えさせられる、いい映画ではありました。(と、無理矢理まとめた感?)

・‥…━━━☆・‥…━━━☆

ところで、
アメリカナイズド・ジャパニーズといえば、近年目にあまるのが、ハロウィンの狂乱でありましょう。

毎年、仮装した人々が繰り出す渋谷の様子や、今年は、心斎橋筋の様子も、ニュースで見ました。仮装すりゃいいってもんでしょうか。口から血を流している仮装とか、ナースの恰好をしている仮装とか。本家アメリカンもびっくりでしょうが、アメリカナイズド・ジャパニーズの吸収力と改変力には、目を見張るものがあります。

そんな私の授業も、ハロウィンパーティーにジャックされました。

20171031

フリーでフランク、ついでにフレンドリーな、バンバラ語の授業でのことでした。

ちなみに、映画『トゥンブクトゥ』のDVDを借りてきてくれたのは、黒一点の「お兄さま」受講生(写真左)です。もちろん正規の学生さんで、最優秀のフランス語専攻学生です。バンバラ語のテキストのフランス語を訳してくれる頼もしい存在で、お兄さまがいなければ、なりなっていなかったであろうバンバラ語の授業です。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆

さらに、アメリカナイズド・ジャパニーズといえば、急に言い出したのが、「ブラック・フライデー」。

「バレンタインデー」の例に漏れず、商戦に結び付けて異文化を取り込む吸収力の強靭さは、アメリカナイズド・ジャパニーズの本領でしょう。

「なんか、ブラック・フライデーって、言葉がよくないよねぇ。1929年のブラック・サーズデー、1987年のブラック・マンデーに続く、縁起の悪い出来事みたいで」という疑念も、大セールを前に霧消するのでありました。

20171125a

upwardright 「わーい、充電式コードレス掃除機、買っちゃおっ。これって、かる~い! 再生シャープを応援だぁ!」

長年、ダイソンのコードレス掃除機を、買おうか、買うまいか、迷い続けてきましたが、やはり、ここは、ブリティッシュではなく、ジャパニーズ優先、ということで、こちらを買い求めました。

販売店のお兄ちゃんの、「ダイソンは外車、シャープのは日本車、みたいなもんですかね。アフターケアの面を考えると・・・」という説明に納得したわけですが、ダイソンのは、若干重いような気がして。

20171125b

upwardright 「ついでに、寝室用の小型オイルヒーター、いかがですかぁ~?」

「こちら、デロンギですと、13800円。」
「こちら、アイリスオーヤマ製、性能も一緒、消費電力も一緒、長持ち度も一緒で、5480円! さぁ、いかがですかぁ~!」

んー、これは、イタリアン VS ジャパニーズ、というよりは、単に、お値段、安い方に軍配!

こうして、すっかり「ブラック・フライデー」にのっかったアメリカナイズド・ジャパニーズは、まんまと掃除機とオイルヒーターを買って帰ったのでありました。


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コメント

シスターJunkoさま、バンバラ語、ですか!先生方も、新たな授業をはじめるために独習なさるんですね。私の学生時代には、西アフリカや北アフリカへ目を向ける余裕がなかった気がします。あ、リンガラ語の授業を取りましたが、土曜日の1限目だったのと、リンガラ語がさっぱり解らなくて(そりゃ当然ですが)、結局後期はずっと欠席してしまいました。確か、一緒に受講していたのはたったの二人、Mama Gora先生と、NHKラジオジャパン勤務の同期のNさんでした。超優秀なお二人の理解力についていけなかったのかも、私…。
映画の件、この映画はまだ見ていませんが、シスターがおっしゃるように、予告編で「盛り過ぎる」というのはたまに見かけますね。日本人はどうしても、物語に水戸黄門の印籠のような「シメ」を期待してしまうんでしょうか…。
もうすぐシスターにお目にかかれますね。どうぞシスターもななみちゃんも、風邪などひかれませんように!

movie シスターのせぽんさま

いつもコメント、ありがとうございます heart04

そうなんですよ、バンバラ語!
毎年、同じことを教えていると、さすがに飽きてきますからねぇ~ sweat02
自分の勉強に、学生さんをつき合わせてしまっている感はありますが・・(^^;)

> あ、リンガラ語の授業を取りましたが、土曜日の1限目だったのと、リンガラ語がさっぱり解らなくて(そりゃ当然ですが)、結局後期はずっと欠席してしまいました。

おー、そうでしたか sign01
シスターの時代にはもう、リンガラ語の授業があったんですね note
しかも、土曜日に!
土曜日に授業があったなんて、そういえば、昔は普通でしたよね・・。
今でも、リンガラ語の授業があります。
確か、シスターの頃は、カルビ先生?
今は、その知り合いの、知り合いの、コンゴ共和国の先生が教えにきてくれています pencil


>  映画の件、この映画はまだ見ていませんが、シスターがおっしゃるように、予告編で「盛り過ぎる」というのはたまに見かけますね。

そう、そう! 「盛り過ぎる」sign01
そういうことなんですね、きっと。
予告編だけ見ると、どんなに素晴らしい映画だろう、と期待して観るけど、本編は大したことなかった、というも結構ありますが、予告編を「盛り過ぎて」いるんですね dash


> 日本人はどうしても、物語に水戸黄門の印籠のような「シメ」を期待してしまうんでしょうか…。

あー、これぞ、まさに「起承転結」の基本ですね flairshine
しかも「勧善懲悪」 sign01
どこかに、こうしたお話の「メリハリ」を期待してしまうんでしょうね。


> もうすぐシスターにお目にかかれますね。どうぞシスターもななみちゃんも、風邪などひかれませんように

ありがとうございます kissmark
去年も確か、七海が風邪で伺えなくなったので、今年は体調を万全に、のぞみたいと思います xmas

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